事業案内

EARTHQUAKE RESPONSE ANALYSIS

地震応答解析

時刻歴解析について

確認申請のみで済む一般的な設計では、建物に想定する地震により加わる最大の水平力を1方向からゆっくりと加える「静的解析」と呼ばれる簡便な手法で設計されます。これに対し、時間経過とともにゆれの大きさ・強さが変化する実際の地震の揺れを、時々刻々と建物に与えて、瞬間瞬間ごとに建物に加わる力や変形を追跡する「動的設計」という手法があり、「時刻歴解析」とも呼ばれます。高さ60mを超える建物の設計(大臣認定)には時刻歴解析が必須です。また、建物の地震時の状態をより詳細に知りたい場合にも用いられます。

地震応答解析のうち、最も基本的で一般的な方法が、「質点系モデル」(いわゆる「串団子モデル」)です。各階の重量をひとつにまとめ、柱・梁などの構造部材を各階ごとに集約してバネに置換します。このモデルに地震動を与え、バネにかかる力(せん断力)やバネの変形を時々刻々と計算します。

これよりも詳細なモデルとして、建物の一部を切り出す「フレームモデル」や、ねじれ振動を考慮できる「疑似立体モデル」、さらに柱・梁などの構造部材を個々にモデル化する「完全立体モデル」などがあります。

質点系モデル 25階建て

質点系モデルの解析例

25階建て集合住宅の免震構造を質点系モデルで時刻歴解析した例です。入力地震動のがたがたした揺れの強さ(加速度)が25階では1/3程度に弱まり、また1階はゆっくりと最大13cmの振幅で揺れており(1階の変位)、免震の特性が確認できます。免震部材に生じる力や変形も履歴ループから、詳細にわかります。

質点系モデルの解析例

設計用入力地震動の作成

時刻歴解析において、エルセントロ、タフトなどの、これまでに実際に観測された地震動(既存波、観測波)のほかに、「人工地震動」と呼ばれるものを用います。建設地の地盤の周期特性を的確に反映した地震動を「人工的に」作って、設計用入力地震動とすることが一般的になってきています。
以下に、人工地震動のうち「告示波」と呼ばれる地震動を作成した例を示します。

告示波作成のフロー

告示波作成のフロー

建設地点での工学的基盤地震動

地下深くの「工学的基盤」と呼ばれる硬い地層での地震動(加速度波形)を求めます。
工学的基盤では、全国で同じ周期特性を有する、と仮定されます。ターゲット(告示で規定される周期特性)に適合する地震動をシミュレーションにより求めます。位相特性を変えて、3波程度作成するのが一般的です。

工学的基盤での加速度応答スペクトル(周期特性)

工学的基盤での加速度応答スペクトル(周期特性)

工学的基盤での加速度波形

工学的基盤での加速度波形

表層地盤のモデル化と非線形応答解析

建設地の地盤は多種多様で、揺れ方は違います。地盤をモデル化し、応答解析することで建設地の地盤特性を反映した入力地震動(地表面の揺れ)を作成します。このモデルを作成するため(せん断波速度を得る)に、「PS検層」という、地盤の硬さの調査が必要になります。

地盤のモデル化

No. 深度(m) 地質 単位体積重量(tf/m3) せん断波速度(m/s) 歪依存特性
1 0.00~5.80 礫混じり砂質粘土 1.7 202 粘性土
2 5.80~6.90 シルト質粘土 1.7 244 粘性土
3 6.90~11.70 礫混じり砂質粘土 1.7 296 粘性土
4 11.70~12.80 砂質粘土 1.7 331 粘性土
5 12.80~15.00 固結粘土 1.8 332 粘性土
6 15.00~18.70 固結粘土 1.8 400 粘性土
*N.6は工学的基盤

作成結果

最大加速度307ガルの地震動が作成されました。これを入力地震動として、建物の時刻歴解析モデルに入力します。周期特性を見ると、0.2秒前後で地盤特性により揺れが増幅していることがわかります。

地表面の加速度波形

地表面の加速度波形

工学的基盤での加速度応答スペクトル(周期特性)

工学的基盤での加速度応答スペクトル(周期特性)